人は、独りでは生きられない。清新な社会学入門書の誕生! ●社会学を学び、実践するための最適の教科書
著者 |
塩原 良和
編
竹ノ下 弘久
編
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出版年月日 |
2010/11/15 |
ISBN |
978-4-335-55140-6 |
Cコード |
1036 |
判型・ページ数 |
A5 上製 ・ 308ページ |
定価 |
2,750円(本体2,500円+税) |
在庫 |
在庫あり
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本書は大学学部学生向けの入門書として書かれた。
社会学的な「視点」の面白さ、奥深さを実感してもらうことを目指している。本書を読んで面白い「視点」に出合ったら、脚注で紹介されている文献や、各章末の「さらに学びたい人のための文献紹介」も参考に、より専門的・個別的な読書にぜひチャレンジしてほしい。
各章のコラムでは、その章に関連する今日的なトピックや、やや高度な論点が紹介されているほか、保育士、市民団体職員、アーティストといった人々が活き活きとした文章を寄せている。これらの人々は研究者ではないが、みながそれぞれの領分における「社会学者」である。私たちはみな、研究者であろうがなかろうが、自分が日々生きている社会を「社会学しながら」生きているのだ。だからこそ、社会学は誰にとっても面白い。「社会学する」面白さを、各章末の「考えを深めよう」に取り組むことで実感してもらえたらと思う。(本書「はじめに」より)
はじめに 塩原良和・竹ノ下弘久
1 人は、独りでは生きられない
2 分業と相互依存
3 構造の束縛
4 変革への想像力
5 批判的思考・再帰的実践・対話
6 本書の構成と使い方
第1部 社会を読み解く――社会学的思考
第1章 「自己」を読み解く――相互行為・後期近代社会・アイデンティティ 荻野達史
1 問わされる「自分」、分からない「自分」
2 「自己」と相互行為
3 「自己」と近代社会
4 「社会学」的な自己論の想像力へ
COLUMN 「分かりやすくされた私」と悩ましい「アイデンティティ」 荻野達史
第2章 「家族」を読み解く――親たちへの批判的なまなざしを問い直す 西村純子
1 「モンスターペアレント」問題
2 「モンスターペアレント」を生みだす社会
3 村落社会の子育てシステム
4 近代化のプロセスと家族
5 近代家族
6 子ども・家族・地域社会の今後
7 「モンスターペアレント」再考
COLUMN 保育園ってどんなところ? 北相模美恵子
第3章 「性」を読み解く――ジェンダーとセクシュアリティ 大貫挙学
1 社会現象としての「性」
2 「女」「男」であることの政治性
3 「異性愛」は「自然」なことなのか?
4 後期近代における「性」の再帰的変容
COLUMN アグネスとブランドン――マイノリティの存在から浮かび上がる性別の社会性 松木洋人
第4章 「教育達成」を読み解く――階層構造・選抜システム・行為選択 荒牧草平
1 格差社会化と二極化の進行?
2 事実の確認
3 社会の仕組みを知る――教育選抜のシステム
4 人々の行為選択と教育達成の階層化
COLUMN 教育熱心と学校不信 荒牧草平
第5章 「階層」を読み解く――グローバリゼーション・労働市場の流動化・不平等 竹ノ内弘久
1 格差問題への関心の高まり
2 階層研究の基本的な考え方と階層移動を媒介する制度
3 日本における階層移動と諸制度との関係
4 脱工業化、グローバル化、労働市場の流動性の増大
5 貧困、階層、福祉国家
COLUMN 外国人の受け入れと統合 ウラノ・エジソン
第6章 「情報」を読み解く――「メディアと政治」研究入門 烏谷昌幸
1 メディアと政治
2 アジェンダの設定
3 政治とテレビ
4 グローバル・ニュースメディアとテロリズム
COLUMN その出来事をニュースにしたのは誰か? 山口 仁
第7章 「環境問題」を読み解く――環境問題の空間的・時間的変容 平岡義和
1 公害から環境問題へ?
2 公害の空間的(国際的)構図の変容
3 地球温暖化の時間的・空間的構図
4 地球温暖化と経済成長――環境社会学の理論から
COLUMN Climategate事件と温暖化の科学的・社会的構築 平岡義和
第8章 「文化」を読み解く――ブラジル系移民の文化活動を事例に アンジェロ・イシ
1 「文化研究」の幅広さと奥深さ
2 「移民の文化」というパズルをどう解読するか
3 終わりなき追跡への誘い
COLUMN 日本で広がる「ブラジル文化」 MC Beto
第2部 社会を調べる――社会学的調査
第9章 数字で社会学する――量的調査と計量分析 田辺俊介
1 はじめに――「数字で社会を見る」ということ
2 量的調査とは何か?――「数字」として社会を捉える方法
3 計量分析の色々――量的調査データを料理する道具
4 数字は「雄弁」である。ゆえに「ウソ」や「間違い」には要注意!
COLUMN 社会調査データの図書館としての「データアーカイブ」 田辺俊介
第10章 ライフストーリーインタビューで社会学する――人生の物語を聞き取る 南山浩二
1 人生の物語を聞き取る――ライフストーリーインタビューへ
2 質的研究法への関心の高まり
3 ライフストーリーインタビューとは何か
4 人間主体の方法としてのライフストーリー研究
5 固有な人生の物語――ライフストーリー研究の実際
6 社会・文化の痕跡を読み解く
7 ユニークで生々しい人生の物語との出会いとさまざま気づき
COLUMN ライフストーリーインタビューと語られ方をめぐる政治 南山浩二
第11章 歴史で社会学する――歴史社会学、あるいは近代世界を縁から折り返す方法 石原 俊
1 1931年、小笠原諸島、ある女性の語りから
2 「周辺」化された側から近代世界をみる
3 近代世界を縁から折り返す
COLUMN 指紋法と移動の管理 高野麻子
第3部 社会を動かす/社会とつながる――社会学的調査
第12章 社会学で社会を動かす――社会学の実践について考える 斎藤嘉孝
1 はじめに
2 社会学を学んだ人が社会を動かす、4つのシナリオ
3 おわりに
第13章 市民運動・社会運動とつながる――社会学から見えてくること 西城戸誠
1 社会を動かす/社会とつなげるための「社会運動」
2 生活クラブ生協の実践――消費材から社会を考える
3 生活者の視点による政治と労働――代理人運動とワーカーズ・コレクティブ
4 「個」の時代の社会運動の困難と可能性
5 社会運動に対して社会学ができること
COLUMN グローバル社会運動 濱西栄司
第14章 地域とつながる――社会学と地域づくり 土居洋平
1 はじめに――地域を研究することは地域とつながること
2 地域と地域づくりを考える
3 地域づくりに〈関わる〉
4 まとめ
COLUMN まちづくり<まちづくろい 遠藤あおい
第4部 社会が変わる――社会学と高度近代
第15章 「社会」が変わる――近代社会の論理とその変容 菅野博史
1 「婚活」の時代背景
2 民主主義制度の再帰性
3 民主主義のパラドックス
4 リスク社会としての現代
5 再帰的近代の可能性
COLUMN 経済システムと再帰性 菅野博史
第16章 「空間」が変わる
――グローバル都市/地方都市における「ジモトらしさ」のゆくえ 五十嵐泰正・川端浩平
1 グローバル化と都市
2 まちづくり/創造都市論の可能性と陥穽
3 「ジモト」と「ヨソモノ」
4 意図せざる帰結としての排除/没個性化
第17章 「国家」が変わる――福祉国家の形成と変容 冨江直子
1 「国家」の両義性
2 近代国家と「個人」
3 共同体としての「国家」――「国民」の形成
4 福祉国家
5 現代福祉国家の挑戦
COLUMN 福祉国家の諸類型 金 成垣
第18章 「国民」が変わる――ナショナリズムと多文化主義/多文化共生 塩原良和
1 「単一民族」社会という「事実誤認」
2 「同質的な社会」という信念と「日本人性」
3 「郷に入れば郷に従え」の不可能性
4 「助っ人」との「共生」?
5 「既得権益」を失うことへの不安
6 「対話」と「共生」の根拠
COLUMN 私を見て疑いなく「日本人」と思うのは時代遅れ 宮ヶ迫ナンシー理沙
第19章 時代が変われば、社会学も変わる
──新しい社会学的思考の担い手となるべき社会学入門者のために 櫻井龍彦
1 はじめに
2 社会学的思考の典型としてのアーヴィング・ゴフマン
3 社会の変化と社会学
4 社会学を学ぶからには
COLUMN 社会学の入門書から見る社会の変化 櫻井龍彦
補論 場所が変われば、「社会学」も変わる――国境を越えて社会学を学ぶということ 木村真希子
1 はじめに
2 西洋の理論と、現地の文脈と――輸入学問としての社会学
3 エスニシティを事例に
4 おわりに――国境を越えて社会学を学ぶということ
索引
執筆者紹介