保障行政の法理論

●公私協働の世界における国家の新たな役割を問い直す野心作!

著者 板垣 勝彦
出版年月日 2013/11/15
ISBN 978-4-335-31216-8
Cコード 3332
判型・ページ数 A5 上製 ・ 592ページ
定価 6,600円(本体6,000円+税)
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内容紹介
目次

 国家の役割は、事務事業の私化(=民営化・民間委託)がなされた後も、失われるわけではありません。事務事業の実施を委ねた民間主体が適切にそれを実施しているかどうかについて指示・監督するという新たな役割(=保障行政)を担うことになります。
 本書は、「責任配分」「規整された自己規整」「保障」の概念から、保障行政の壮大な構想を骨太にかつ緻密に展開する若き俊英の渾身のデビュー作。これからの行政法学の地平を切り拓く注目の一冊。

序章 問題意識
 第1節 国家は撤退したのか?
  第1項 「官から民へ」?
  第2項 国家の役割の増大
  第3項 国家は撤退したのか?
 第2節 政府と市場、公と私の関係変化
  第1項 行政法は規律する対象を失うのか?
  第2項 事務の民間委託―公権力・公益の担い手の拡散
  第3項 「自律」の初期条件
 第3節 ドイツ法研究の意義―視線の先はドイツへ
  第1項 比較法の対象―なぜ、ドイツなのか
  第2項 保障行政の法理論
  第3項 考察の方法
第1章 公私協働による任務の引き受け
 第1節 総説
 第2節 高権的な任務の引き受け―規制行政、給付行政、保障行政
  第1項 総説
  第2項 規制行政とその現代的変容
  第3項 給付行政と公企業
  第4項 給付国家から保障国家へ―保障行政の登場
  第5項 以降の見通し
 第3節 行政の市場参加
  第1項 総説
  第2項 調達行政
  第3項 公企業
  第4項 小括
 第4節 協働による任務の引き受け
  第1項 協働とは
  第2項 法律執行における私人との協働
  第3項 行政組織内部における私人との協働
 第5節 私人による公的任務の遂行
  第1項 総説
  第2項 私化の4つの基本的要素
  第3項 手続私化
 第6節 中間総括
第2章 私化に対する法的な制御
第1節 総説―制御学としての行政法学
  第1項 制御学としての行政法学
  第2項 プロセスとしての私化
  第3項 本章の考察方法―プロセスとしての私化に対する法的な制御
 第2節 プロセス1:私化決定を“発見”する過程に対する法(規範)的な制御
  第1項 国家的任務とは何か?
  第2項 私化決定を“発見”する過程に対する規範的な制御
 第3 節 プロセス2:私化決定それ自体に対する法的な制御
  第1項 総説
  第2項 憲法
  第3項 ヨーロッパ法
  第4項 単純法律
  第5項 小括
 第4節 プロセス3:任務の委託に対する法的な制御
  第1項 概観
  第2項 一般的行為(法律、法規命令、条例)を用いた任務の委託
  第3項 執行段階における個別行為を用いた任務の委託―公私協働契約
 第5節 プロセス4:私化が行われた後の法的制御(兼、中間総括)
  第1項 私化の果てをさぐる問い
  第2項 保障責任の具体化に向けて
  第3項 公法学に「責任」概念を導入するということ
第3章 鍵概念としての「責任配分(Verantwortungsteilung)」
 第1節 「責任(Verantwortung)」という概念
  第1項 議論の端緒
  第2項 日本語の「責任」に対応する諸概念
  第3項 国家理念としての責任
  第4項 小括:責任に対する一般的な理解
 第2節 公私協働と「責任配分(Verantwortungsteilung)」
  第1項 責任配分―任務、権能、権限
  第2項 公私協働と責任配分の諸類型
  第3項 公私協働における責任配分の構造
 第3節 彷徨うVerantwortung
  第1項 概観
  第2項 学説
  第3項 判例
  第4項 実定法
  第5項 法概念を整理する試み
  第6項 小括
 第4節 「行政責任」概念を導入する試みに対する警鐘―レール
  第1項 教義学的概念としての行政責任?
  第2項 行政法における「責任」概念の利用
  第3項 行政責任―国家と私人の多彩な協働における行政の役割
  第4項 小括―過渡的概念としての「責任」
 第5節 民主的正統化と距離の確保―トゥルーテ
  第1項 トゥルーテにとっての責任配分
  第2項 責任配分と国家像の新たな構築
  第3項 責任配分の法的枠組み
  第4項 小括
 第6節 保障行政法のドグマーティックの構築―フォスクーレ
  第1項 保障行政の法理論における位置付け
  第2項 分業による公共善実現と国家の責任
  第3項 保障行政法のシステムライン
  第4項 保障行政法ドグマーティックの6つの礎石
  第5項 フォスクーレから得られた示唆
 第7節 「信頼の文化」の醸成
  第1項 ホフマン‐リームと保障行政
  第2項 国家と社会の関係変化
  第3項 行政の現代化状況を表す責任配分
  第4項 「信頼の文化」の先にあるもの―霧中のレール
 第8節 中間総括
第4章 保障責任の具体化
 第1節 総説
 第2節 ユニバーサルサービスの保障―公企業の“民営化”における保障責任
  第1項 概観
  第2項 第三者の私権行使による継続性の危機
  第3項 公企業と労使関係
  第4項 平等性の確保
  第5項 品質の確保と適応性の保障
  第6項 私化が失敗に終わった場合の“買戻権”
  第7項 特別な権利(黄金株)による企業支配とその制約
  第8項 小括
 第3節 手続私化における保障責任
  第1項 概観
  第2項 私人に手続を委託する際の予防措置
  第3項 第2次的な秩序付けに関する措置
  第4項 私手続の成果を「受容」する際に及ぼすコントロール
  第5項 小括―保障責任の限界と捕捉責任
 第4節 職務責任
  第1項 総説
  第2項 権限受任(Beliehene)をめぐる問題
  第3項 行政補助(Verwaltungshilfe)をめぐる問題
  第4項 求償による負担割合の調整
  第5項 特別法や公私協働契約による解決
  第6項 規制権限不行使との関係―私化全体の視点から
  第7項 小括
終章 日本法への示唆
 第1節 ドイツ法の総括
  第1項 福祉国家から保障国家へ
  第2項 責任配分
  第3項 保障―公企業の“民営化”と手続私化
  第4項 規整された自己規整
 第2節 行政法理論への新たな視座
  第1項 先学から受け継がれてきたもの
  第2項 新たな視座によって見えてくるもの
 第3節 結語―国家と私人、それぞれの「責任」
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