言論市場への国家の積極的関与とその憲法的統制
●不可視化・巧妙化する国家活動への憲法的統制の可能性を探る!
著者 |
横大道 聡
著
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出版年月日 |
2013/12/30 |
ISBN |
978-4-335-30332-6 |
Cコード |
3332 |
判型・ページ数 |
A5 上製 ・ 408ページ |
定価 |
5,500円(本体5,000円+税) |
在庫 |
在庫僅少
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現代における国家の規制手法は、刑事罰などを典型とする直接的なものから、もっと多様でかつ容易に把握できない間接的なものへと、ますますシフトしつつあります。本書が考察対象とする「文化助成」のように、一見して規制とはわからない形をとって表現活動や言論市場に関与・参加してくる国家の活動に対して、憲法とりわけ表現の自由はいかなる意味を持ちうるのか。本書は、こうした極めて現代的な問いに対し、アメリカ憲法学における表現の自由論の歴史的展開過程をひも解き、これまで個別に論じられてきた感のある「特権論」「違憲な条件の法理」「パブリック・フォーラム法理」「政府言論の法理」といった諸法理の相互関係を整理・体系化することを通して、回答を試みます。わが国憲法理論にも新たな風を吹き込む、気鋭の研究者による注目の1冊。
序論
I 問題の所在
1 法と文化との関わり
2 憲法学における「文化」の主題化
3 直接規制から間接規制へ
II 助成の義務と権限
1 なぜ文化助成が憲法上容認されるのか?
2 文化助成の「義務」
3 日本国憲法からの文化助成義務の導出可能性
III なぜ「表現の自由」か
1 実定憲法上の統制
2 表現の自由論における文化助成の位置づけ
IV 本書の構成
第1部 「違憲な条件の法理」の盛衰
第1章 「違憲な条件の法理」の成立と展開
I 「特権論」と「違憲な条件の法理」の誕生
1 特権論
2 対抗法理の誕生
II 違憲な条件の法理の展開(1)―ウォーレン・コート期
1 違憲な条件の法理の再出現とブレナン判事の役割
2 ウォーレン・コートのブレナン判事
3 ブレナン判事の「感覚」
III 違憲な条件の法理の展開(2)―バーガー・コート期
1 バーガー・コート期の中絶をめぐる判決から
2 「感覚」の差異
3 バーガー・コート期の表現活動への助成をめぐる判決から
IV 小括
補論1:特権論の対抗法理
補論2:「免税」と「助成」との関係
第2章 Rust判決とそのインパクト
I Rust判決の概要
1 事実の概要
2 法廷意見
II Rust判決の論理
1 違憲な条件の法理の再構成
2 ブラックマン判事反対意見
3 先例との一貫性
III Rust判決のインパクト
1 ホームズ判事の復活?
2 Rust判決をめぐる論争
IV 小括
第3章 違憲な条件の法理の検討
I 違憲な条件の法理の意義と問題点
1 違憲な条件の法理の内実
2 違憲な条件の法理に対する批判
3 批判の整理
II 違憲な条件の法理をめぐる学説
1 「強制」と「申し出」の区別
2 「自律」以外への着目
3 違憲な条件の法理の放棄?
4 自己統治・公共討論への着目
III 小括
補論3:助成プログラムの範囲を超える条件を違憲とした事例
第4章 公的表現助成と表現の自由―Rust判決以降の連邦最高裁のアプローチ
I Rust判決の射程の限定
1 Rosenberger判決
2 Rosenberger判決の意義
3 Southworth判決
II 私人の表現の促進のための助成
1 競争的プロセスが関係する場合
2 パブリック・フォーラムが創設されない場合
3 言論が行われる「場」が果たす機能
III 小括
第2部 公的表現助成に対する憲法上の統制
第5章 パブリック・フォーラム法理
I パブリック・フォーラム法理の起源
1 ホームズ判事再訪
2 Hague判決の概要
3 Hague判決の含意
II パブリック・フォーラム法理の展開
1 伝統の有無
2 パブリック・フォーラム法理の進展
III 「現代」パブリック・フォーラム法理の成立
1 パブリック・フォーラムの3分類
2 Perry判決後の展開
IV 小括
補論4:ブレナン判事のパブリック・フォーラム論
第6章 パブリック・フォーラム法理による公的表現助成の統制可能性
I 助成とパブリック・フォーラム
1 物理的「呪縛」からの解放?
2 カテゴリ間の区別
II パブリック・フォーラム法理を類推適用することの意味
1 観点差別の禁止
2 パブリック・フォーラム法理の変容?
3 基本的両立性テストの復活?
III 助成目的二分論の問題点
1 助成目的二分論と意図基準
2 新たなパブリック・フォーラム法理による統制の可能性
IV 小括
補論5:観点差別の意味内容
第7章 公的表現助成と「公共討論」
I 公共討論の歪みの是正
1 フィスの表現の自由理解
2 公的表現助成と公共討論
II 中立性の領域の確保
1 違憲な条件の法理の陥穽と聴衆の視点
2 「中立性の領域」アプローチ
III 憲法の領域と文脈的アプローチ
1 ポストの「公共討論」理解
2 文脈的アプローチ
IV 検討
1 公共討論のありよう
2 パブリック・フォーラム法理との親和性
V 小括
第8章 公的表現助成と「文化制度」
I 文化助成のリベラルな正当化
1 公共財としての文化
2 文化の「構造的枠組み」
3 考察
II 制度への着目
1 制度と表現の自由
2 制度と連邦最高裁判決
3 シャウアー理論の裏付け?
4 文化制度と専門職―ボリンジャーの議論
III 文化制度・公共討論・専門職
1 両者の議論の位置づけ
2 文化制度と公共討論との関連
3 公的文化助成に対する憲法上の統制の方途
4 日本の問題状況に即して
IV 小括
第3部 言論市場における発言者としての政府
第9章 政府言論の法理
I 政府言論の「法理」の整理
1 位置づけ
2 出自
3 法的効果
4 根拠
5 狭義の政府言論
II 小括
第10章「政府言論」該当性の判断枠組み
I 連邦控訴裁判所判決の判断枠組み
1 KKK判決
2 Wells判決
3 SCV判決
4 Rose判決
II Johanns判決とそれ以降の判断枠組み
1 Johanns判決
2 Johanns判決以降の連邦控裁判決の判断枠組みの揺らぎ
III 表現を受け取る聴衆の理解―Summum判決
1 Summum判決の概要
2 Summum判決後の展開
IV 検討
1 判決の展開の整理
2 テストの背後にあるもの
V 小括
第11章 政府言論の憲法的統制
I 政府言論と民主的政治過程論
1 民主的政治過程論による統制
2 法定立と説明責任
3 政府言論のインテグリティ?
II 政府言論に課される制約(1)
1 国教樹立禁止と政府言論
2 法律・規則・慣行
3 平等条項による統制?
III 政府言論に課される制約(2)
1 政府言論の「方法」に対する制約
2 政府言論の「対象」に対する制約
3 政府言論の「内容」に対する制約
4 政府言論の「結果」に対する制約
IV 小括
第4部 コミュニケーションの諸相
第12章 表現しない自由と表現の「帰属」
I 思想の自由と「表現しない自由」
1 イデオロギー的表現の強制
2 団体のイデオロギー的表現活動のための協力の強制
3 イデオロギー的でない表現の強制と思想の自由?
II 表現の自由と「表現しない自由」
1 非イデオロギー的表現の強制
2 一般名称広告への資金援助の強制
3 表現を強制することは常に「表現しない自由」を侵害するか?
4 団体に対する表現の強制
III 「表現しない自由」の内実
1 「意に反する表現の帰属」の射程
2 「意に反する表現の帰属」と修正1条の価値
3 政府言論の統制としての「表現しない自由」
IV 小括
第13章 表現からの自由と囚われの聴衆
I ダグラス判事の「囚われの聴衆」論
1 「囚われの聴衆」論の源流
2 ダグラス判事の心変わり?
3 差異の消失
II 連邦最高裁の「囚われの聴衆」論
1 表現からの自由と「囚われの聴衆」論
2 「囚われの聴衆」の一般的理解
III 「囚われの聴衆」論の検討
1 「囚われの聴衆」該当性
2 囚われの聴衆に向けられた政府言論
IV 小括
終章
I 本書のまとめ
1 違憲な条件の法理の盛衰―第1部のまとめ
2 私人の表現の促進のための助成とその憲法的統制―第2部のまとめ
3 政府言論の法理とその憲法的統制―第3部のまとめ
4 「表現しない自由」と「囚われの聴衆」―第4部のまとめ
II 日本の憲法学への示唆と今後の検討課題
1 表現の自由の比較憲法的意義
2 統治論の観点
3 おわりに
【事項・人名索引/主要判例索引】