憲法とリスク

行政国家における憲法秩序

●「リスク社会」においてあるべき憲法秩序のあり方を探る

著者 大林 啓吾
出版年月日 2015/06/30
ISBN 978-4-335-30333-3
Cコード 3332
判型・ページ数 A5 上製 ・ 450ページ
定価 6,380円(本体5,800円+税)
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内容紹介
目次

 リスク社会と言われる現代社会。科学技術の進歩によって、テロや犯罪などの人為的リスクのみならず大規模災害やパンデミックなどの自然的リスクに対してもある程度の対応が可能となった一方で、その対応そのものが、監視や隔離をはじめとした人権侵害のリスクを新たに生み出します。このようにリスクが循環するなかで、リスク対応には専門技術性、広範な裁量および迅速さがますます求められ、国家とりわけ行政機関の役割がますます大きくなっていくことは避けられません。
 このような「行政国家」化は、行政・立法・司法の三権のバランシングを企図した憲法秩序の中で、どのように説明し、位置づけることができるのか。本書はこうした問題意識のもとに、監視、犯罪予防、公衆衛生、情報提供、環境問題の各領域における行政・立法・司法のせめぎ合いを現代アメリカや日本の事例を素材にして丹念に分析。とりわけ肥大化しがちな行政作用を憲法秩序の中に誘導していくためにはいかなる仕組みや条件が必要かという点を中心に、リスク社会にふさわしい憲法秩序のあり方を探究します。憲法・行政法研究者のみならず、専門技術性の高い行政実務に携わる人にも必読の1冊。

 序章

第1部 総論

 第1章 憲法とリスク――リスク社会における立憲主義のモデル
  序
  I リスクのスパイラル
  II 現代立憲主義とリスク問題
  III リスク社会とバランシングアプローチ
  IV 21世紀におけるマクロ的リスク――9.11後の憲法状況
  後序

 第2章 行政国家とリスク社会――行政によるリスク対応とそのリスク
  序
  I 行政による憲法価値の実現
  II 執行府/行政機関の憲法解釈
  III パターナリズムの蔓延
  後序

 第3章 行政国家における憲法秩序の形成――行政立憲主義の概念
  序
  I 行政立憲主義
  II 高次立法に基づく行政立憲主義
  III 政治的統制による秩序形成
  IV 狭義の行政立憲主義の憲法秩序
  V 司法的統制による秩序形成
  VI 内部的統制
  後序――行政国家における憲法秩序の形成に向けて

第2部 各論

 第4章 監視とリスク――9.11後のテロ対策を素材にして
  序
  I 2005年の盗聴問題
  II 執行府の情報収集
  III NSA盗聴事件の憲法問題
  IV 司法および立法の統制
  V プリズム問題(2013年盗聴問題)
  VI 今後のゆくえ――オバマ政権の政策転換と立法動向
  後序

 第5章 犯罪予防とリスク――性犯罪予防を素材にして
  序――リスクの個人化
  I 性犯罪のリスクと性犯罪予防
  II 刑事手続に関する連邦最高裁の判例
  III 自由の利益(liberty interest)の動揺
  IV 移動制限およびGPS装着の問題
  V プライバシー侵害の検討
  VI 情報プライバシー
  後序

 第6章 公衆衛生とリスク――感染症対策を素材にして
  序
  I 公衆衛生に関する国家の責務
  II パンデミック対策と人権制約問題
  III 隔離とデュープロセス
  IV 生命の優先順位と平等――感染症対策の給付的側面
  V 公衆衛生監視とプライバシー権
  後序

 第7章 情報提供とリスク――食の安全に関する情報を素材にして
  序
  I 国家による情報提供のリスク
  II 国家の情報提供と信用毀損
  III カイワレ訴訟の判例法理
  IV 法的統制と法的責任の行方
  V 報道機関による情報提供のリスク
  VI 農作物信用毀損法の憲法問題 
  VII さらなる課題
  後序

 第8章 環境問題とリスク――温室効果ガス規制を素材にして
  序
  I 環境問題の特殊性と執行府の対応
  II 温室効果ガス規制の準備――司法の後押し
  III コンパニオンケース
  IV オバマ政権における温暖化規制と司法判断
  後序――温暖化規制と司法

 終章

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