コミュニケーション

コミュニケーションはいかにして可能か?

著者 大澤 真幸
出版年月日 2019/02/27
ISBN 978-4-335-55194-9
Cコード 1036
判型・ページ数 4-6 上製 ・ 384ページ
定価 2,750円(本体2,500円+税)
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内容紹介
目次
コミュニケーションについて問うことは、人間とは何か、について考えることである。
コミュニケーションはいかにして可能かという問いに切り込む「沈黙の双子」、認知科学や人工知能におけるフレーム問題という難問に挑む「ロボットのジレンマ」、思弁的実在論の検討、さらには脳科学、精神分析における無意識、心理学や精神医学と社会学との接点に浮かび上がる諸問題を鮮やかに考察し、多彩な視点からコミュニケーションの本質に迫る。

《著者からのメッセージ》
コミュニケーションは奇蹟である。われわれは常に、他者たちとコミュケーションをとっている。だがどうしてそんなことができるのか。いかにしてコミュケーションは可能なのか。コミュニケーションが現に生起しているということは、大きな神秘、その謎が解ければほかのすべてのふしぎは消え去るのではないかと思えるほどに大きな神秘である。まずは、コミュニケーションの神秘がまさに神秘である所以を理解しておく必要がある。コミュニケーションはどのような意味で奇蹟なのか。
世界とは結局のところ、他ならぬこの私にとっての世界である。誰にとっても、世界は、〈私〉の認識と相関してたち現れており、それ以外に世界は存在しない。「〈私〉にとっての」という条件から独立した世界そのものは、誰に対しても現れず、存在しないはずだ。(本書「まえがき」より)
まえがき
第Ⅰ部 基礎理論
第1章 コミュニケーションの(不)可能性の条件──沈黙の双子をめぐって
 1.社会学の主題としてのコミュニケーション
 2.沈黙の双子
  【1】10分間違いの姉妹
  【2】「ゾンビ」のように
  【3】私の影
 3.関連性理論──フレーム問題の魔術的解決?
  【1】認知的関連性の原理
  【2】伝達関連性の原理
  【3】発話の魔術?
  【4】知っていることを知っていることを……
 4.嫉妬と抑制 
  【1】二重焦点の世界
  【2】極端にゆっくり行動する二人
  【3】嫉妬と抑制の「8の字回路」
 5.他者の欲望
  【1】二種類の他者
  【2】双子はどこで躓いているのか
  【3】普通だが奇妙な性体験
  【4】西インドからイギリスへ、そして……
 6.言語行為の構造
  【1】抽象的執行仮説
  【2】言葉を発すること
  【3】主人と奴隷
 7.沈黙の構成
  【1】超越論的仮象
  【2】沈黙の構成
  【3】フレーム問題の克服
 8.電話と郵便と魔法 
  【1】弱い他者たちの系列
  【2】郵便と電話
  【3】盗みと魔術
 9.アメリカと子どもと放火
  【1】アメリカ願望
  【2】先に「子ども」をもつこと
  【3】放火と裁判
  【4】容姿をめぐる競争
 10.内在と超越

第2章 フレーム問題再考──知性の条件とロボットのジレンマ
 1.間抜けなロボットたち
  【1】間抜けなロボットたち
  【2】フレーム問題とは何か
  【3】フレーム問題とは何でないか
 2.解決への試み 
  【1】フレームまたはスクリプト
  【2】STRIPS
  【3】UNLESS
 3.表象主義の陥穽
  【1】表象主義
  【2】「被造物」という名のロボット
  【3】認識は行為である
 4.無視すること
  【1】フレーム問題はなぜ解けないか
  【2】認識=行為を支える非認識=非行為
  【3】消極的な操作
 5.サーカムスクリプション
  【1】知識の囲い込み
  【2】サーカムスクリプション
  【3】サーカムスクリプションの限界
 6.集合論的類比
  【1】順序数
  【2】構成的集合
  【3】連続体仮説
 7.他者の潜在性 
  【1】同じであることと異なること
  【2】無視という操作の二つの条件
  【3】他者の潜在性

 深層学習(ディープラーニング)はフレーム問題を克服できるか?
 1.第三次AIブーム
  【1】三回のAIブーム
  【2】人間よりも強い将棋ソフト
 2.深層学習
  【1】誤差逆伝播
  【2】教師なし学習
  【3】深層学習の基本構成
 3.それはまったく解決されていない
  【1】問題は残っている
  【2】ノイズを入力する
  【3】フレーム問題の隠蔽
 4.記号接地問題 

第3章 根源的構成主義から思弁的実在論へ……そしてまた戻る
 1.社会学理論の到達点――根源的構成主義
  【1】社会学理論の閉塞
  【2】根源的構成主義
 2.相関主義を超えて
  【1】思弁的実在論
  【2】相関主義を超える?
  【3】「神の存在証明」のように
 3.二重の偶有性
  【1】存在論的証明への批判
  【2】現れの偏り
  【3】二重の偶有性
 4.理論と哲学

第Ⅱ部 応用
第4章 交換にともなう権力・交換を支える権力
 1.交換理論の基本着想
 2.権力とは何か
 3.所有とは何か
 4.富=権力説
 5.交換に伴う権力
 6.交換を支える権力
  【1】「片思い」現象
  【2】コールマンの理論
  【3】交換を支える権力
 7.二つの権力
 交換理論について

第5章 脳科学の社会的含意
 1.内部と外部の界面
  【1】内部観測と外部観測の乖離
  【2】内部観測から外部観測へ
  【3】外部観測から内部観測へ
  【4】内部と外部の界面
 2.〈社会〉としての脳
  【1】資本主義と脳科学
  【2】脳という〈社会〉
  【3】盲視──残された旧い部署
  【4】幻肢──官僚制
  【5】カプグラ症候群──「一心同体」の家族が分解したら
  【6】分離脳──安易なワイドショー的説明
 3.三層の自己
  【1】アントニオ・ダマシオ
  【2】情動的反応としての意識
  【3】三層の自己
  【4】中核自己のパラドクス
  【5】「空虚」としての自己
  【6】前未来の視点
 4.だます情動
  【1】情動は嘘をつかない?
  【2】情動も嘘をつく
  【3】「真実」はどこにあるのか
  【4】脳科学は「死の欲動」を取り込みうるか

第6章 精神分析の誕生と変容──二〇世紀認識革命の中で
 1.エディプス神話の改訂版?
  【1】エディプス・コンプレックスの神話的解題
  【2】第二の科学革命と二〇世紀認識革命
 2.相対性理論と探偵
  【1】第一の科学革命
  【2】第二の科学革命の第一ステップとしての相
  【3】探偵小説の登場
 3.死んだ父
  【1】動く茸、動く彫像
  【2】「無意識」の発見
  【3】規律権力――フーコーの議論から
 4.量子力学と「もう一人のモーセ」
  【1】波束の収縮と政治的決断主義 
  【2】二人のモーセ
 5.死の欲動

第7章 女はいかにして主体化するのか──河合隼雄の『昔話と日本人の心』をもとに
 1.「その部屋」を見てはなら
  【1】見るなの座敷
  【2】西洋の「見るなの部屋」
  【3】女性性と「見るな」
 2.宮廷愛との比較
  【1】宮廷愛
  【2】不可能なことを禁止する
 3.異類としての女
  【1】何でも食う女
  【2】グレートマザーの両義性
  【3】運命を紡ぐ
  【4】夕鶴
 4.女の憂鬱/笑いの誘発
  【1】女の憂鬱
  【2】ブルー・ベルベット
  【3】女は笑わす
  【4】手なし娘の手
 5.穴底の三位一体
  【1】穴底の三者
  【2】老人の声
  【3】肯定の道と否定の道

あとがき
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