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21世紀にはいり、宗教をめぐる問題は、より複雑で多様になり、また一時期予想された以上に、宗教はその影響力の大きさを保っている。日本では20世紀末から宗教離れの傾向が指摘されたが、それは組織的な宗教に関わる人が、いくぶん減少していることを意味する。民俗信仰やオカルト、神秘現象、超常現象といったものへの関心は決して衰えていない。また世界的に見れば、9.11以来、宗教が関係する紛争や宗教原理主義への注目が集まり、とりわけイスラームの存在が大きくクローズアップされた。異文化宗教への知識や理解が、これまでになく必要な時代となっていると言える。
宗教を情報産業と位置付ける研究者がいるが、宗教にとって、情報の発信と受信はきわめて重要な活動である。情報化が進行する社会では、宗教運動や宗教団体の活動は多様化する。またグローバル化が進行する状況のなかで、宗教間の相互影響、また異文化宗教からの影響というものも格段に大きくなっている。社会全体の構造が複雑化することにより、どこまでを宗教的現象、出来事に含めるかの見極めも、従来に比べてずっと困難になっている。
こうした現代の状況を踏まえて、この事典は刊行される。現代社会における宗教現象を理解したり、学ぼうとするとき、従来の宗教の歴史や教えについての基本的知識に加えて、新しく兆している宗教現象への知識や、新しいアプローチの仕方が必要になってくる。そこで、宗教を理解する上で基本となるような項目に加え、とくに近現代の宗教現象、さらにはそれと関わりの深いテーマに関する項目を中心的に選んだ。
記述は、なるべく具体的で分かりやすいものになるように努め、新しい研究の方法や視点も多く紹介するようにした。人々が今何を知りたいと思っているかを念頭に置き、その理解のために有効な用語、人名、団体、文献などを、宗教社会学的な視点をベースにしながらも、関連する領域に幅広く目を注いで選定した。古典的な学説やすでに研究者の間で共通認識になっている用語や概念については、なるべく現代社会における具体的事例を提示し、生きた概念として把握できるようにした。
現代世界において、宗教はどのような姿をあらわしているか、新たにきざしつつある潮流を見逃さないよう、知のフロンティアを積極的に目指すものとした。この事典を用いることによって、いかに宗教という現象が現在と今後の日本社会、国際社会の理解にとって重要な位置を占めているかを実感してもらえればと願っている。
2004年11月
編者 井上順孝
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